先に答えを書きます。
ストロメクトール(一般名:イベルメクチン、疥癬治療薬)が新型コロナウイルスには効くかどうかわかりません。(書き始めた当初は多分効きませんと書いていましたが、論文を読んでみると試験管での実験ですがきちんとした論文なので、人間の体にも効く可能性もありそうなので、わかりませんの表記に変えました)。
というのもストロメクトール(一般名:イベルメクチン、疥癬治療薬)が患者さんに効くとも効かないとも検証されていないからわからならいということです。
(書き始めた当初は「少なくとも私の持っている知識では効くとは思えません」と書いていました)
というのもストロメクトール®は抗ウイルス薬ですらないからです。
では何故タイトルにしているかというと、ストロメクトール®というダニの治療薬が新型コロナウイルスに効くという噂が出回ったらしく、薬がなくなったためストロメクトール®が出荷調整になっているからです。
疥癬について
当院に来られる方で疥癬の方はめったにおられませんが、数年ぶりに疥癬の患者さんが来られました。
疥癬はヒゼンダニというダニによって引き起こされる病気で、とても痒いのが特徴です。
病変部位から皮膚をとって顕微鏡で見るとダニが見つかります。
ダニが見つかった時点で疥癬という病気の確定です。
治療薬がタイトルのストロメクトール(イベルメクチン)です。
疥癬を引き起こすダニに対して劇的に効きますが、虫卵には効果が期待できないため2週間程度でもう一度内服してもらうことが多いです。
で、処方したところ薬局から連絡がありました。
ストロメクトール®が新型コロナに効くという話があって出荷調整になっているので薬がありませんというものでした。
ストロメクトール®が新型コロナウイルスに効く?
お恥ずかしながらストロメクトール®が新型コロナウイルスに効くという話を知らなかったので、びっくりしてしまいました。
どうやら患者さんがいかれた薬局では、在庫がないとのことでした。というのもストロメクトールが新型コロナウイルスに有効という噂が出回っているらしく出荷調整になっているため、いつ手に入るかわからないということでした。
あとでわかったことですが、患者さんが薬局に行かれたのが夕方だったため薬局さんから卸さんには連絡したものの、卸さんに在庫がなく卸さんからメーカーに問い合わせることもできなかったため、その時点ではいつ手に入るかわからなかったそうです。
かといって患者さんは痒くて困っておられるため、何日も待つわけにはいきませんので在庫を持っている薬局を探してみました。幸い在庫がある薬局さんが見つかったため一安心でした。在庫が確保できる薬局さんを患者さんにお伝えして判断してもらうようにしました。(患者さんを特定の薬局さんに誘導してはいけないため)
結局4日後には最初にいかれた薬局さんにも入荷したそうです。
噂の根拠
正直なところストロメクトール®(疥癬治療薬:イベルメクチン)が新型コロナウイルスに有効という話を聞いた時には馬鹿な噂が広がったものだと思ったのですが、ウィキペディアで調べてみると噂の根拠が書いてありました。(出典:ウィキペディアより)
2019新型コロナウイルスの治療薬への応用[編集]
2020年4月4日、オーストラリア南東部メルボルンのモナッシュ大学の研究チームは、「イベルメクチン」が、実験の結果、2019新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抑制に効果があったと発表した。1回量のイベルメクチンで同ウイルスの複製を48時間以内に止めることができた。今後、臨床試験を行い、できるだけ早くCOVID-19(新型コロナ肺炎)の治療薬として応用したいとしている
参考文献:The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro
最後に
調べてみると誰かが思いつきで言いはじめたような根も葉もない噂ではなく、論文が根拠になっていることがわかりました。
論文を読んでみるとストロメクトール®がもしかしたら新型コロナウイルスに効くかもしれないと淡い期待を持ちました。
それが皮膚科医なら誰もが知っている薬というのが興味深いと思いました。
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