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 痛みのある湿疹(帯状疱疹:Herpes zoster)

痛みのある湿疹ができましたとして患者さんが来られることがありますが、その多くが帯状疱疹という病気です。
帯状疱疹とは字のごとく、帯状(帯を巻いたような)の疱疹(水疱:水ぶくれを生じる皮疹)のことです。
帯を巻いたように分布するのは、脊髄から出てくる神経にそって発症するからです。神経が分布しているところであればどこでも発症する可能性がありますので、身体のどこに出てもおかしくはありません。体幹で出た場合半分帯を巻いたような形になるので、帯状疱疹が名前の由来になっています。足や腕、頭に出ることもあり、それぞれの神経支配に沿って出るので場所によっては帯を巻いたような皮疹にならないこともあります。頭部に出た場合には半分ヘルメットをかぶったような形で発症することもあります。

 原因

病気の原因としては小児期に罹患した水疱瘡(水痘)を引き起こす水痘帯状疱疹ウイルスが神経節に潜んでいて、疲れや寝不足などの免疫機能の低下によりその水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。再活性化した神経節の神経支配領域(神経の分布域)に一致した部位に小水疱を生じます。

 治療

抗ウイルス薬での治療及び、痛みに対する鎮痛剤での治療を行います。
当院で行っている治療は抗ウイルス剤内服、抗ウイルス剤外用、鎮痛剤を行います。
具体的な内容は以下の通りです。
患者さんに説明の上患者さんに薬剤を選択していただきます。
ジェネリックにするか先発品にするかは薬局でご相談いただいています。

薬価 特徴
(発売が最近のものを上にしています)
アメナリーフ®︎
(薬価収載:2017年)

1411.9円 ×2錠7日分=19768円

(3割負担:約5930円)
ジェネリック医薬品はありません

リファンピシリン(抗結核薬)との併用は禁忌(絶対にダメということです)のため内服中の患者さんは飲むことができません。
腎機能による補正が必要ないため、ご高齢の方でも同量の処方ができます。
70歳以上の方には基本的にこのお薬をお勧めしています。
ファムビル®︎
(薬価収載:2008年)
373.9円×6錠7日分=15283円
(3割負担:約4590円)
ジェネリック医薬品があります
禁忌薬がないことが特徴です。
比較的新しいお薬で主にジェネリックをご希望の方が選択されます。
バルトレックス®
(薬価収載:2000年)
354.2円×6錠7日分=14874円
(3割負担:約4460円)
ジェネリック医薬品があります。
ゾビラックス®の経口吸収性を改善したプロドラッグ(生体による代謝作用を受けて活性代謝物へと変化し、薬効を示す医薬品)です。
授乳中の方も内服可能ですので授乳中の方にはこのお薬を処方しています。
ゾビラックス®
(薬価収載:1988年)
92.4円×10錠×7日分=6468円
(3割負担:約1940円)
ジェネリック医薬品があります
妊娠中の方も内服可能ですので、主に妊娠中の方に処方しています。
※その他併用薬の薬剤費(アラセナA軟膏(3割負担540円・セレコックス(3割負担:290円))と調剤料(薬局により異なります。3割負担で数百円です)がかかります。 ※効果の比較データはありませんが、私の印象では新しいもの(この表で上にあるもの)ほど効果が高い印象があります。効果が高いとは、症状が速やかに改善すること、痛みが残りにくいことです。

発症初期、軽症の場合、若い方の場合ファムビル®でもよいと思いますが、症状が激しく重症な場合、70歳以上の年配の方の場合アメナリーフ®をお勧めすることが多いです。

 

 治療例

アメナリーフ®2錠×7日間
セレコックス®2錠×7日間
アラセナA軟膏で治療を行いました。
1週間後
痛みが残存しているため痛みの治療のためセレコックス®2錠×7日間で治療を継続いたしました。
2週間後
皮疹も改善していますし痛みが改善しています。
アメナリーフ®2錠×7日間
セレコックス®2錠×7日間
アラセナA軟膏で治療を行いました。
1週間後水疱は痂皮化しています。
痛みが残存しているため痛みの治療のためセレコックス®2錠×7日間で治療を継続いたしました。

 予防法

帯状疱疹には予防法があります。
その予防法とは乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」乾燥組み替え帯状疱疹ワクチン「シングリックスです。
50歳以上の方が適応です。(50歳未満の方が接種することもできますが、万が一入院するような副作用が起こった場合補償が受けられないという問題があります。)
当院では予約制で行っております。全額自費診療で乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は1回のみで税込7000円、乾燥組み替え帯状疱疹ワクチン「シングリックスは1回22000円、2回接種計44000円です。
二つのワクチンの詳しい違いはこちらをご覧ください。

 

帯状疱疹の治療に関する注意点

時間はかかるものの帯状疱疹は治療をしなくても治りますが、上記の治療をした方が早く治る傾向があります。また帯状疱疹に罹患すると治った後も痛みに悩まされる帯状疱疹後神経痛(PNH)になってしまう可能性がありますが、抗ウイルス剤で治療することで帯状疱疹後神経痛に罹患する可能性を低くすることが期待できます。そのため治療の主な目的は帯状疱疹後神経痛を残さないことです。

帯状疱疹の治療に関する注意点は、2つあります。患者さん側の注意点と治療者側の注意点です。
患者さん側の注意点はとにかく早く治療を始めることです。痛みを感じる部位に赤いあるいは水疱(水ぶくれ)ができた場合はできるだけ早く皮膚科を受診されることをお勧めします。(ただし痛みがあるだけで赤みや水疱など皮膚症状がない場合には診断がつきませんので、赤みや水疱が出た時点でできるだけ早く受診してください)
治療者側の注意点は年齢・症状に応じて適切な治療薬を選択することです。データがあるわけではなく私の印象ですが、表の上の方にある新しい薬の方が治療効果が高く帯状疱疹後神経痛に悩まされる方が少ないように思います。

皮膚科では年齢・病態に合わせてアメナリーフ®やファムビル®(一般名:ファムシクロビル)を使用し帯状疱疹後神経痛をできるだけ避けるようにしていますが、皮膚科以外の開業医で治療された場合バラシクロビル(バルトレックス®のジェネリック医薬品)で治療された患者さんが帯状疱疹後神経痛で悩まれる傾向があるように思います。
特にご高齢の場合、アメナリーフ®での治療がお勧めです。勿論アメナリーフ®を使用しても痛みが残ることもありますが、アメナリーフ®の方が帯状疱疹後神経痛に悩まされる方が明らかに少ないように思います。(残念ながら最近では薬の効果による直接比較をすることが難しくなっているため、直接比較した文献やレポートなどはありません。)
一方30代、40代の若い方はファムビル®(一般名:ファムシクロビル)やバルトレックス®(一般名:バラシクロビル)などで治療しても帯状疱疹後神経痛で悩まれることは少ないようです。
(論文で報告があるかもしれないと考えて検索してみましたが、見つけられませんでした)

皮膚科以外の病院や診療所でも帯状疱疹の治療はしてもらえると思いますが、20年前に発売されたバラシクロビルしか処方してもらえないこともあるようです。
また高齢者の場合、腎機能が低下しているため腎排泄のバラシクロビルは減量投与が必要ですが、減量されず通常量を投与された場合アシクロビル脳症の発症の報告があります(参考:高齢者におけるアシクロビル脳症の1例)。バラシクロビルの処方にも慣れている皮膚科での治療をお勧めします。
特に症状が中等症以上で激しい場合(参考までに上の写真は中等症です)には皮膚科を受診されることをお勧めします。

帯状疱疹の後痛みが引かない場合、帯状疱疹後神経痛(PHN:Postherpetic neuralgia)に移行しているため、当院では痛みの専門の外来(総合病院のペインクリニックあるいは麻酔科)に紹介いたします。

帯状疱疹の皮疹が治っても痛みが引かない場合、お近くのペインクリニックの受診をご検討ください。

余談

2020年4月に特に帯状疱疹の患者さんが多かったのでブログに記載しています。
もしよかったらご覧ください。

帯状疱疹のブログ一覧はこちらをご覧ください。

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