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食べ物を飲み込めない
お子さんが口の中で食べ物をモゴモゴしてなかなか飲み込まないことがあるようです。しかしお子さんも食べ物を飲み込むことが出来ず辛い状況なのかもしれません。もしかしたらまだうまく話すことのできないお子さんにとって、食べ物を飲み込むことが出来ないことが一種のボディーランゲージとしてメッセージを発信しているのかもしれません。「食べ物を飲み込むのが辛い」というメッセージを込めた無言の行動なのかもしれません。食べ物を飲み込めないことが病気だとまだ認識されていないため、子供が自分の意思で食べ物を飲み込まずに遊んでいると勘違いして怒ってしまう親御さんもおられることでしょう。そうではなくて、恐らく飲み込みたくても飲み込むと辛くなるので飲み込めないのです。お子さんの立場からすると2重に辛い思いをしてしまうことになります。何故なら、食べ物を飲み込むと辛いからやむを得ず飲み込まずに口の中にためているのに、そのやむを得ずとっている行動を責められるからです。
お子さんが食べ物を飲み込めなくて困ってしまったら、怒るのではなくて病気かもしれないと心配してあげてください。
お子さんが食べ物を飲み込めない病気とは逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)です。
小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)
詳しくは小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)をご覧ください(治療してよくなった娘や息子、患者さんたちに関するブログ記事のリンクが貼ってあります)。
逆流性食道炎とは酸性の胃液が食道に逆流することで食道に炎症を起こすことで発症します。
日本消化器病学会の胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015によると日本人の有病率(病気を有する率)は10%前後とされている疾患です。
大人では比較的認識されつつある疾患ですが、小さなお子さんでも症状があることはあまり知られていません。医師の間でもほとんど知られていないため、疑うことすら難しいようです。
以下にまだうまく症状を言葉にできない小さいお子さんの逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)でも見つけることが出来るように、私が確認した他覚症状をあげてみようと思います。
他覚症状
- 昼食・夕食は少量だけ食べられる
(恐らく昼間は横にならないため、食道に炎症があっても空腹もあり何とか食べられる)- 食事はしないがお菓子は食べることができる
(恐らくお腹は空くため、少量で満足感が得られるお菓子は食べる。お菓子だと量が少ないため胃液がそれほどでないため逆流が起こらないが、食事をすると胃液が多量に出ることで逆流が起こるため食事はしたくない)- 食後横になれない、あるいは食後横にならない
(恐らく食後横になると食べた物を消化するために分泌された胃液が食道に逆流するため、食道炎がひどくなるのを経験的にわかるようになるため横にならなくなる)- 食べ物を口の中でモゴモゴさせて飲み込まない
(恐らく食事を飲み込むと胃液が食道に逆流するようになるため辛くなり、食事が進むにつれて次第に飲み込めなくなる)- 嘔吐・発熱などの症状はなく元気なのに体重が減っているあるいは体重が増えない
(たくさん食べると胃液が逆流することで辛くなるため無意識のうちに食べる量を辛くならない量に加減してしまうため。自覚症状である食欲がわかない結果体重が減るのかもしれません)
- 食べ物を口の中でモゴモゴさせて飲み込まない
これが食べ物を飲み込めないことを表しています。私の推測ですが、恐らく食事を飲み込むと胃液が食道に逆流するようになるため辛くなり、食事が進むにつれて次第に飲み込めなくなるのではないかと思います。逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)を発症した娘の場合、食べているとすぐにお腹いっぱいになるそうです。もしかしたら頭では食べたいと思っているから口の中には入れて噛むけれども、お腹がいっぱいで飲み込めないのかもしれません。
恐らく「胃液の逆流」・「食事中の満腹感」のいずれかで飲み込めないのだと思います。
私はこの「食べ物を口の中でモゴモゴさせて飲み込まない」あるいは「食べ物を飲み込めない」の症状だけでも小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)を疑って治療をしてみてもよいのではないかと思います。更に他の症状もあればなおのこと小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)の治療を試してみてもよいと思います。
治療
逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)は胃液が食道に逆流することで症状を引き起こすと考えられています。特に胃液の中の胃酸(塩酸です)が悪さをするといわれていますので、その胃酸を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害薬)と言われる薬を飲むとよいと思います。
大人ではいくつかの種類の薬が発売されジェネリック医薬品も発売されていますが、お子さんの適応のあるPPI(プロトンポンプ阻害薬)は種類が限られています。私が確認したところネキシウム®というお薬は小児の適応があり、子供たちにも飲ませています。1才から適応があるようです。
副作用は極々稀な場合を除き、重篤なものはないようです。胃酸の減少に伴う腸内細菌の変化のためか、消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐、便秘など)が1%未満、皮膚症状(発疹、皮膚炎、そう痒症、蕁麻疹)も1%未満ですが報告があります。
日本消化器病学会の胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015のフローチャートによると、問診などで逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)が疑わしい場合、内視鏡検査をしなくてもPPI(プロトンポンプ阻害薬)の投与が記載されています。診断確定のためには内視鏡検査が望ましいのかもしれませんが、小児の場合現実的ではありません。症状から逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)が疑われ、PPI(プロトンポンプ阻害薬)内服で症状が改善する場合には逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)と考えてよいと思います。
内服で劇的に効果が出ることが多いですが、すぐにやめると症状が再燃してしまうようです。そのため症状が治まっても2~4週間の内服をお勧めしています。
最後に
小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)にも書きましたが、まず病気かもしれないと疑うことです。
お子さんが食べ物を飲み込まないのは癖、あるいは遊びだと思わず、飲み込みたいのに飲め込めない本人にとって辛い状況なのではないかと疑ってあげることです。
(ブログに書きましたが、息子が辛い状況に2か月気づいてやれませんでした。参考:元気が1.5Kg減!)
幸い2018年に小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)の治療薬が発売されているため、治療法もあります。疑うことさえできれば診断は比較的容易で、治療も一定期間の内服で治ることが多いです。
小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)を疑った場合、小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)の理解のある小児科を受診されるか、主治医の先生に試しにネキシウム®を処方してみてくださいと相談してみてください。残念ながらまだ小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)の診断基準がないため理解していただけるかわかりませんが、上記の高く症状に当てはまるとお伝えするか小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)のページを紹介していただいてもよいかもしれません。