伝染性膿痂疹(飛び火・とびひ)とは細菌感染により引き起こされる疾患です。
原因菌は主にS.aureusu(Staphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌)によるものとS.pyogenes(Streptococcus pyogenes:化膿レンサ球菌(かのうレンサきゅうきん))によるものがあります。S.aureusu(Staphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌)によるものは水疱を生じることが多く、破れてびらん(傷)になることがあります。S.pyogenes(Streptococcus pyogenes:化膿レンサ球菌(かのうレンサきゅうきん))によるものは痂疲・瘡蓋状になることが多いのが特徴です。
MRSAによる伝染性膿痂疹(飛び火・とびひ)
MRSAとはMethicillin‐Resistant Staphylococcus Aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の略称です。黄色ブドウ球菌の中でもメチシリンという抗生物質に対する抵抗性(耐性)を持っているものをいいます。抗生物質が効きにくいため治療に難渋することがあります。MRSAでも通常の黄色ブドウ球菌でも症状に違いはありません。抗生物質が効きにくいことや、細菌培養という検査をすることでMRSAであることがわかります。
初診時(2020/8/23)
伝染性膿痂疹の診断にて念のため細菌培養に提出するとともに、少しでも早く治す目的で抗生物質ファロム®での治療を開始しました。 |
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細菌培養結果MRSA 薬剤感受性検査結果の①の欄にあるAMPC、CFPNなどの記号がそれぞれ抗生物質の略称で、Sが感受性あり(抗生物質が効くということ)、Rが感受性なし(抗生物質が効かないということ)です。 MRSAの割に抗生物質が効きやすいタイプでした。 |
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再診時(2020/8/31)
上記のごとく投与したファロム®は耐性をもっていますが、幸い症状は改善していました。 |
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再診時(2020/9/7)
症状は改善しているため終診としました |
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今回は最初から細菌培養を行いましたが、通常はファロム®などの抗生物質が効かない場合に細菌培養に提出し、適切な抗生物質で治療を行います。 MRSAでも感受性がある可能性のある抗生物質はホスミシン®(FOM)・バクタ®(ST)・ミノマイシン®(MINO)などです。細菌培養で内服の抗生物質に対する感受性検査ができるようになるまでは、ファロム®などで治療を行い、治りが悪い時にはホスミシン®など抗生物質の系統を変えて治療をしていました。いわば経験に基づくあてずっぽうでの治療をするしかなかったので治りにくいこともありました。 最近では細菌培養により効果の期待できる抗生物質を突き止めて効果的に治療を行うことが出来るようになりました。特に治りにくい伝染性膿痂疹(飛び火・とびひ)は細菌培養を提出することがお勧めです。 |