食後嘔吐を繰り返す2歳の男の子にお越し頂きました。小児科を受診されても良くならないとのことで途方に暮れておられましたが、ネット検索で当院の「小児の逆流性食道炎」の記事や子供達の逆流性食道炎の記事を藁をもすがる思いで受診されたそうです。
受診までの経緯
1軒目の小児科を受診された際は、嘔吐を繰り返すのは大変だということですぐに総合病院小児科を紹介されたそうです。紹介された総合病院小児科ではCTにエコーなど色々検査をされたそうですが、結局原因がわからなかったそうです。一度にたくさん食べさせず小分けにして食べさせるように指導されたそうですが、少量の食事でも必ず嘔吐を繰り返したそうです。
その後も食後嘔吐を繰り返すことが続くため2軒目の小児科を受診されたそうです。これまでの経緯を説明されたそうですが、残念ながら取り合ってもらえなかったそうです。発達障害で嘔吐を繰り返すことがあるとのことで発達障害を疑われ、療育センターへの紹介状を作成されたそうです。お母さんは信じられなかったため行かれなかったそうです。
ネットで症状を検索していた時に当院の記事を見つけて頂き、思い切って受診して頂いたそうです。ブログの記事の文面からキツい事は言われないだろうということで受診して頂いたそうです。
症状
食事のたびに必ず嘔吐を繰り返すそうです。少量ずつ食べさせても必ず嘔吐を繰り返すそうです。体重は少しずつ増えているそうですが、食べている割には体重の増えが少ないそうです。
お菓子だけ食べるわけではなく食事を食べることが出来ますし、食後横になる事はあるそうです。口の中でモゴモゴさせるようなことはなかったそうです。私がこれまで経験した「小児の逆流性食道炎」の症状とは少し異なる印象でした。
治療
私がこれまで経験した「小児の逆流性食道炎」の症状とは少し異なる印象ですが、食後胃液が食道に逆流した刺激で嘔吐する可能性が考えられました。大きな副作用はあまりないため、逆流性食道炎の疑いでネキシウム®︎を内服してみてもらうことにしました。
治療後1週間の経過
1週間後の今日再診していただきました。この1週間嘔吐が止まったそうです!お母さんはこれまでの経緯もあるため、半信半疑な印象でしたが、1年間嘔吐を繰り返すお子さんが薬を飲んで1週間ピタッと止まったのは偶然とは考えにくいことを私とお母さんで確認しました。
結果的にネキシウム®︎が有効なことから、逆流性食道炎かどうかはわかりませんが、少なくとも胃液が何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられました。
嘔吐が止まったことで発達障害が否定される訳ではありませんが、少なくとも発達障害によって嘔吐を繰り返す可能性は否定されたと思います。何故ならネキシウム®︎で嘔吐が止まったからです。
食後の嘔吐が止まったことを喜んで頂きました。
引き続きネキシウム®︎を処方させていただきました。
食後嘔吐を繰り返す理由(仮説)
食後の嘔吐がネキシウム®︎内服でピタッと止まったことから胃液が何らかの影響を与えている事は間違いなさそうです。食後嘔吐することから、胃の内容物が胃液と共に食道に逆流し、食道を刺激することで嘔吐している可能性が考えられます。もしかしたら噴門(胃の内容物を食道に逆流させない仕組み)の機能不全があるのかもしれません。元々胃液が食道逆流しやすい体質に加えて、食道が胃液による刺激に耐えかねて嘔吐してしまうのかもしれません。
診断を確定させるためには胃カメラしかないと思いますが、この病状で2歳のお子さんに胃カメラは通常行わないと思います。
小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症)について
これまで私が確認した小児の逆流性食道炎の他覚症状は以下のものです。
他覚症状
・昼食・夕食は少量だけ食べられる
(恐らく昼間は横にならないため、食道に炎症があっても空腹もあり何とか食べられる)
・食事はしないがお菓子は食べることができる
(恐らくお腹は空くため、少量で満足感が得られるお菓子は食べる。お菓子だと量が少ないため胃液がそれほどでないため逆流が起こらないが、食事をすると胃液が多量に出ることで逆流が起こるため食事はしたくない)
・食後横になれない、あるいは食後横にならない
(恐らく食後横になると食べた物を消化するために分泌された胃液が食道に逆流するため、食道炎がひどくなるのを経験的にわかるようになるため横にならなくなる)
・食べ物を口の中でモゴモゴさせて飲み込まない
(恐らく食事を飲み込むと胃液が食道に逆流するようになるため辛くなり、食事が進むにつれて次第に飲み込めなくなる)
・嘔吐・発熱などの症状はなく元気なのに体重が減っているあるいは体重が増えない
(たくさん食べると胃液が逆流することで辛くなるため無意識のうちに食べる量を辛くならない量に加減してしまうため。自覚症状である食欲がわかない結果体重が減るのかもしれません)
お子さんが食べ物を飲み込めないのは病気かもしれません|小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)l橋本クリニック
この中には「食後の嘔吐」は含まれていませんが、他覚症状の一つに加えるべきかもしれないと考えるようになりました。もう少し検討してみたいと思います。
まず疑うこと
基本的に自覚症状が中心のため小児の逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)は気づかれにくいのが特徴です。
恥ずかしながら私の子供次女と長男が逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)になりましたが、逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)を疑っていないため気づくのが遅れました。嘔吐などの明らかな他覚症状がないため病気だと認識できず体重が次女で3Kg、長男で1.5Kg減った時点でおかしいと思いました。
特に長男は「横になったらオエオエが出る」と泣きながら訴えたことからピンときて診断に至りました。4才で言葉にできたことで診断に至りました。もっと年齢が低いと言葉にできないため逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)を疑って他覚症状から類推するしかありません。(そもそも疑っていないと上記症状に気づけないと思います)
特に息子の場合、食事はしなくてもお菓子は食べるので、病気とは思えませんでした。
上記に当てはまれば診断と治療を兼ねて「小児の逆流性食道炎」の治療を試してみることがお勧めです。
何にしろ食後の嘔吐が止まってよかったです。嘔吐が止まったのを聞いた瞬間ガッツポーズをしてしまいましたw。
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