先日驚くような番組が放送されました。結構好きなテレビ番組「ザ!世界仰天ニュース」です。
余り名指しで批判などはしたくはないのですが、内容が間違っていて、脱ステロイドは命に関わる可能性があるため掲載しておきます。
放送によると「ステロイドを塗ると症状が良くなるが、ステロイドをやめると症状が再燃するのはステロイドを使い過ぎた影響で体内のステロイドが作られなくなったため」とされていました。
色々間違いがあるので訂正していきたいと思います。
脱ステロイドは命に関わることがあるため、突然脱ステロイドを始められる場合には命懸けになる可能性があることをご理解の上で脱ステロイドを始めるようにしてください(私は脱ステロイド療法はお勧めしていません)。そのことについても説明させていただきます。
ステロイドをやめると症状が再燃する理由
ステロイドを使うと症状が良くなっても、ステロイドをやめると症状が再燃する理由は単純で、原因が取り除かれていないからです。その証拠にステロイドをやめても、原因を取り除くと再びステロイドを使うことなく症状がピタッと止まります。
症状が再び出てしまうのは原因が取り除かれてはいないからです。原因は人によって様々なので、当院では色々皮膚病の原因となり得る生活習慣がないかお話をお伺いして、原因の可能性が高い行動から修正してもらうようにしてもらっています。
仮にステロイドが副腎で作られないから皮膚の症状が抑えられないと仮定すると、当院で起こっている事実の辻褄が合いません。何故なら副腎でステロイドが作れないことが原因なのであれば、原因を取り除いても症状が出なければいけません。実際には原因を取り除けば症状が出ないので仮定が間違っているのではないかと思います。
副腎が働いていないと・・・
確かにステロイドを使いすぎると副腎不全と言って副腎が働きにくくなることはありますが、そもそも本当に副腎が働いていないと急性副腎不全(副腎クリーゼ)という命に関わる状態に陥ることがあります。その説明をした上で患者さんも覚悟の上で脱ステロイドをしていれば良いのですが、この説明をせずに脱ステロイドをして命の危険に晒してしまった場合には裁判で負けてしまうと思います。実際に脱ステロイド治療により悪化したと裁判で認められ賠償金が支払われて判例があるようです。(参考:医療事故・医療過誤の裁判事例)。
あくまでもテレビでみた印象ですが、テレビで紹介されていた症状では強いステロイドを使っていたとしても、副腎機能不全(副腎がステロイドを作らなくなる状態)を引きおこすほどのステロイドの量や強さを使っていたようには思えません。
脱ステロイドをはじめて熱が出る、血圧や血糖値が低下して意識が混濁する場合は副腎クリーゼの可能性がありますのですぐに医療機関を受診するようにしてください。この状態でもステロイドを避ける場合命に関わる可能性があることを知った上で脱ステロイドを選択されることをお勧めします。途中で結局ステロイドを使うのであれば、最初から適切なステロイドの使い方をしてくれる皮膚科を受診するようにしてみてください。また吐き気や嘔吐、倦怠感、頭痛、冷や汗、脱力感などが生じることもありますので、脱ステロイドを行なってこのような症状が出た場合にも適切な医療機関を受診されることをご検討ください。
リバウンド症状
リバウンド症状とは、ステロイドで抑えていた症状がステロイドをやめたことで急速に悪化する症状のことを言います。テレビでは体内のステロイドが不足するから症状が増悪するとしていますが、原因が取り除かれていないため炎症を繰り返しているに過ぎません。元々炎症がある状態が正常な状態ではありませんから、体内のステロイドが足りないと炎症を起こすわけではありません。元々人間の体は炎症がない状態が正常な状態であり、体内のステロイドが働かなくても炎症は生じません。
炎症を生じた原因を突き止めることができないので、体質で炎症が起きてしまうと理解されているのだと思います。体質で炎症が起きるから治らないと解釈されているようです。
リバウンドはステロイドをやめた時点で炎症を起こす原因が続いているから生じるだけです。ステロイドを突然やめても原因を取り除くことができればリバウンドなしで突然ステロイドをやめることは可能です。
ステロイドをやめても自然と治った理由
ステロイドを使わず治った理由がテレビ番組では体内でステロイドが作られるようになったからと説明されていました。
仮にステロイドが体内で作られなくなったことが原因だと仮定すれば、作り始めるのに今回のように1年もかかったりはしないので辻褄が合いません。またステロイドが作られるようになったから皮膚症状が良くなるという理由では、一時改善した皮膚症状がステロイドを使わないのに増悪する理由の説明がつきません。(テレビ番組では改善しかけてもその後増悪することを何度も繰り返していたそうです)
1年ちょっとで治ったことは確かなようですが、治った理由がテレビ番組では何も触れられていません。
つまり偶然治っただけに私には見えてしまいます。理由が明確ではなく治ったので再現性がないことが問題です。
あくまでも私の想像ですが、1年の間に改善・増悪を繰り返していたようなので、無意識のうちに悪化因子を見極めて自然と悪化因子を避けるようになっている可能性が考えられます。意識して狙って生活習慣を変えて良くなっていれば、再発しにくいと思いますが無意識のうちに避けているだけなので人には良くなった理由を説明できないのだと私は思います。
脱ステロイド療法の注意点
脱ステロイド療法の注意点は、あくまでもステロイドをやめて治ったという因果関係ではなく、ステロイドをやめたことと皮膚病が治ったことは無関係な結果の可能性が高いということです。もし脱ステロイドをされるのであれば、誰しもが1年あれば必ず治るというわけではないということを理解された上で始められることをお勧めします。しかもテレビ番組で紹介されていたように、一時的に皮膚病がかなり悪化することを覚悟の上でされる必要があります。
ステロイドをやめたことと、皮膚病が治ったことの因果関係は見つけにくいのではないかと思います。何故なら理由がわからないからです。
つまり偶然を期待してステロイドをやめることになります。
ステロイドの適切なやめ方
私は脱ステロイドをしたくなる心理は理解できますが、闇雲に無条件にステロイドをやめるのはお勧めしません。何故なら急速に悪化する可能性が高いからです。ステロイドをやめる場合には適切なやめ方をするようにしましょう。具体的には、原因を取り除くことで症状が出ないことを確認しながらステロイドをやめていくことです。日常生活のあらゆることが原因となりえます。その原因だと疑ったことを取り除くことで皮膚病が治れば、おそらくその原因だと疑ったことは犯人だと思います。一つ一つ生活習慣を変えてみることで原因を炙り出すしかありません。
更に具体的な例をあげると、寝不足が原因の可能性がある場合1週間ほどしっかりと寝る(7時間程度が目安でしょうか)ことで皮膚病が改善するかどうか試します。改善すれば寝不足が皮膚病の一因だとわかります。(ちなみにニキビ(尋常性ざ瘡)、イボ(尋常性疣贅)、化膿性爪囲炎は実際に睡眠をとることで改善した患者さんがおられます)
様々なことが原因となり得るので、常識にとらわれずあらゆる生活習慣を原因かもしれないと疑って、生活習慣を変えて症状が改善するか試してみてください。
検討がつかない場合には橋本クリニックを受診してみてください。様々な生活指導をさせていただきます。
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