最近では少なくなりましたが、当院を受診される患者さんの中には出される薬がステロイドと聞くと、顔色が変わるほど嫌っておられる方もおられます。
理由を聞くと、ステロイドは強い薬であり、副作用が怖いから絶対使いたくない!
とおっしゃいます。
外用のステロイドの一般的な副作用を説明しても、絶対嫌だとおっしゃる患者さんには、基本的に副作用の起こりやすい非ステロイド系の抗炎症剤の投与は極力避け、保湿剤のみ処方することが多いです。(最近ではアトピー性皮膚炎に対してステロイドではない、プロトピック軟膏、2020年に発売されたコレクチム軟膏などステロイド以外の選択肢もありますので、お気軽に橋本クリニックを受診してみてください)
私のステロイドの説明に納得していただけた場合には、通常ステロイド剤を処方することが多いです。

実は多くの皮膚科医は、非ステロイド系の抗炎症剤はあまり使いません。
なぜなら大して効果がないのに、かぶれることがあるからです。
効果がなくて、かぶれることがあれば、それこそ既に薬ではない気がします。
かぶれなければ、大して害はないのですが・・・。効果も余りありません。

目次

ステロイドの副作用について

話が戻りまして、ステロイド外用剤(塗り薬)の話です。
ステロイド外用剤の副作用で、短期間で生じるものは毛のう炎(ニキビ)です。これはステロイドの外用を中止することにより治癒します。起こったとしても一過性のことなので心配する必要はないと思います。
長期間使うことによる副作用は、強いステロイドを長期間外用していると生じるもので、皮膚が薄くなったり(皮膚の菲薄化)、皮膚が炎症がないのに赤くなったり(血管拡張)、多毛になったりします。
ちなみに、ステロイドの副作用として一般に恐れられている、高血圧や高脂血症、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、緑内障・白内障、動脈硬化、骨粗しょう症、大腿骨頭壊死などは、あくまでも内服や注射・点滴の副作用です。皮膚の状態や外用の種類や期間によっては、極々まれに生じることもあるかもしれませんが、通常はステロイドの外用では起こらない副作用ですのでご安心ください。
残念なことに不安を煽るために外用の副作用と内服・点滴の副作用を混ぜて話される方がおられます。情報が曖昧なこと(ステロイドの外用と内服・点滴の副作用の区別がついていないこと)で混乱し、怖くなってしまうのです。

身近の出来事に置き換えた例え話

こういった内容を説明すると多くの方に納得していただけますが、それでもステロイドを外用することに躊躇されておられる方にいつもお伝えする話があります。
『交通事故は怖いですよね。外を歩くと交通事故にあうかもしれないですよね。だからと言って外に全くでないですか?』
『交通事故(副作用)が怖いから、外を歩かない(ステロイドを塗らない)』
道路も信号を守る・歩道を歩くなどルールを守って歩けば、それほど怖くはないとは思うのですがいかがでしょうか?
(事故だと、こちらがルールを守っていても、あってしまうことが確かにありますけどね)
また得られるメリットと、副作用の起こる確率のバランスの問題だと思います。
ステロイドを塗ってすぐに皮膚が薄くなるのなら、塗るべきではないと私も思いますが・・・。
6歳の頃長女に毎日せっせと大人用の強いステロイド外用薬を家内が塗っていましたが、14歳になった今でも副作用は出ていません。

ステロイドの使い方・副作用を十分理解している皮膚科医と相談しながら、治療を行えばそれほど怖くはないと思いますが、いかがでしょうか?

説得してステロイドを使う医者

私は説得してまでステロイドを使うことはしません。何故ならステロイドを使うこともステロイドを使わないことも患者さんに選択してもらう問題だと思うからです。
多くの医者はステロイドを使わないと治りにくいことがわかっているので、ステロイドを使うように誘導しがちですが、治らなくてもよいからステロイドを使いたくないといわれる患者さんにステロイドを出すことは、私は余計なお世話だと考えています。
私はステロイドを使わないと速やかには改善しませんが、それでもステロイドを使わなくてもよいですか?とお伺いするようにしています。それでもステロイドはいらないですといわれた場合にはステロイドを出すことはありません。保湿剤を中心に生活指導により症状の改善を誘導するようにしています。

何故なら皮膚の状態が良くなくて困るのは患者さんであって、医者ではないからです。困る人の問題であって、困らない第三者が口出しする問題ではないからです。その皮膚の状態が良くない状態でもよいから、ステロイドを使いたくないと考えられる考え方は尊重されるべきだと思います。

どうしてもステロイドを使いたくないのに説得しようとする医者の場合、他のステロイドを塗りたくない患者さんの心理を理解できる医者を探されるほうがよさそうです。患者さんご自身が納得の上でステロイドを使われないことは問題はないと思いますが、逆にステロイドを使わないように説得する医者にも問題があると私は考えています。ステロイドを含めて薬に関して疑問がある場合、主治医に要望を伝えて応じてもらえないようであれば別の病院を受診するのも一つの選択肢だと思います。

納得していないのに、処置で院内でステロイドを塗られた場合、もしかしたら強要罪が成立してしまうのではないかとふと思いました。(これは法的な裏付けはありませんが・・・)

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